13, 09. 2010 アルカサバ


暫くして,長い行列が僅かずつ動き始めた。どうやらアルハンブラ王宮への入場が始まった様子だった。僅かずつ前へ進み,前方に係員が見える位置迄進んだ。不思議なことに、係員の位置から戻って来る人々がいることに気付いた。大分近付いて、様子が判る位置迄進んだ。チケットを提示しているのに,戻される人々が相変わらず多かった。何やら抗議している人も見えたが,係員は厳然としていた。事情がさっぱり掴めない。漸く自分の番が来て,チケットを提示した。係員が時間が違うと,首を振った。注意を喚起する様に,チケットの下にある時間に、印を付けて戻してよこし,アルカサバへは02:20、王宮には17:30の入場となると云った。チケットを買求めた折,デザインをちらっと眺めただけだったので、時間には気付かなかった。



11時前にチケットを購入しているのに,何故その様な時間が割り当てられているのか、見当も付かなかった。抗議をしていた人の気持ちが,良く判った。仕方なくカルロス宮殿の前の広場の,高い樹の下のベンチに掛けて、頭を冷やした。ガイドブックには,確かに時間制限があると書かれていたが、間隔を置いて人数が一定になったら,入場させるということかと理解していた。それにしても、17:30の入場は合点がいかない。一服しながら人々の流れを見ていて,原因が掴めた。団体客の入場だった。ツアー客は日本固有のものではなかった。中国人のツアー客,欧州人のツアー客が、続々と詰めかけて来た。恐らく,事前に都合の良い時間帯のチケットを確保しているものと思われた。

チケット売場の近くにバス停があったので、空いた時間を“下界”に戻る選択肢もあったが、直ぐに取り止めにした。家を出てから10日余り、毎日歩きづめだった。前日街の様子は見ていたし,列車のダイヤの変更で、思いがけず出来た長い時間を,このアルハンブラの丘で過ごそうと決めた。暫く座っていると、キョウチクトウの樹の下からアタローと同じ白黒の猫が現れた。痩せて小さく、人間をを警戒する猫だった。




2時を過ぎたので,アルカサバの方へ歩いた。カルロス宮殿の左横に広がる広場の奥にあった。この丘の宮殿の中では最も古い城壁跡で、三角形の敷地の先端は,グラナダの街に突き出している様に見える。ポツポツと人々が集まり始めた。此処でも門前払いをされている人々があった。もう少し納得のいく運営方法がありそうな気がする。入口のアーチを潜ると,直ぐに階段があった。広場の奥から眺めた風景よりも視界が広がって良くみえる。城壁は分厚く,砦の様相を見せていた。






更に細い階段に導かれて,高い位置に出る。視界が一段と広がる。城壁の内部は,以前はどの様な姿だったのか、部屋の土台と思われる遺構が広がっていた。カルロス宮殿の奥には,アルハンブラ王宮と思われる建造物が望まれた。






最も先端で,高い塔の上には,鐘が吊るされていた。女性客の一人にお願いして,旅の間の唯一の写真を撮って頂いた。この位置からの遺構や街の風景は、長く記憶に残るものと思われる。






ゆっくり見回ったので,アルハンブラ王宮への入場迄は、それ程多い時間ではなかった。雲が時折広がるので,見終わる迄雨が降らぬ様に念じた。