09, 09. 2010 小さなホテル


旅のホテル選びは、中々難しい。まして旅行社お薦めの、何処の国にでもあるアメリカンスタイルの大きなホテルが嫌いとなると、選択肢は一段と狭まり難しさが増す。ツアー客で賑わうピカピカした大きなホテルよりも、危険でさえなければ、少し古めの土地の匂いが感じられるホテルが佳い。旅行社から送られて来たWebの資料と、印刷物を何度も見て、行動系に合う場所、規模の余り大きくないホテルを選んだ。選んだ中で、コルドバのホテルが、最も小規模なものだった。選択理由は、主目的のメスキータに近いこと、26室と小さな家族経営のホテルと記されていた2点に因る。

現地に着いてみると、入口のささやかな表記が無ければ、ホテルとは気付かぬ程の、可愛らしいホテルだった。足を踏み入れて、此処を選んで正解だったと確信した。華美ではないが、しっとりした設えのロビーの奥にパティオがあって、南国の風情があった。フロントの女性はてきぱきとしていて、英語も聞き取り易かった。部屋は今回の旅で唯一シングルベッドが1台のみの比較的狭めの部屋だったが、セミダブルベッドが2台並んだ広過ぎる部屋よりは余程落ち着いた。バスタブも洗面台も真っ白で、綺麗に磨かれていた。ホテル名が浮き織りになったタオル類も、真っ白でふかふかしていた。窓を開けると、先刻ロビーの奥に見えたパティオを覗くことが出来た。





翌朝、朝食を摂ろうと降りて行ったが、ロビー廻りにそれらしい場所が見当たらない。見回していると、フロントの女性が近付いて来て、「別の場所です。付いて来て下さい。」と先に立って歩き出した。ロビーを抜け、外へ出た。5・6 m先の開放されたままの入口から入る。如何にもスペインらしいパティオがあって、その奥の階段を上った。階段を上がった先の部屋に、朝食が用意されていた。右手の大きな部屋が食堂になっていた。左手が厨房で、背丈と身幅が余り変わらぬ女性が陣頭指揮を取ってらした。取り皿を手にしていると、寄って来てパンのロースターについて説明を始めた。何処のホテルにもあったものだけれど,遮らずに説明を聞く。スペイン語だけれど、話の内容は判る。添えてあるナイフでパンを薄く2つに切って、右手からロースターに入れると、左手から焼けたパンが出て来ると云うこと。それ迄、朝食はクロワッサンを食べていたのだが、折角の説明だったので、その朝はバケットに鞍替えした。最上部と下写真が、離れた食堂のパティオ。



朝食後時間に余裕があるので、散歩に出かけた。前日バスで通った道を北へ進む。道の両側の並木は,オレンジだった。少し先の旧い石塀には、ハゴロモジャスミンが垂れ下がっていた。歩道から見える建造物の入口が面白い。小さな教会や、建造物の壁に埋め込まれた聖母像があった。









バス通りが広い道路と交叉する角に、ローマ遺跡があった。老年のご夫婦が何かを覗き込んでいらした。通りを渡って行ってみると,掘られた穴の下に,白い猫がいた。乾燥飼料と水が置かれてあった。列柱の柱頭の装飾が転がっていた。バスからの眺めでは気付かぬ情景に満足して散歩を終えた。





昨日は,気温も湿度もぐんと下がって,暑さに慣れた身には涼し過ぎる一日だった。今日は重陽節句で甥の誕生日。メールを入れてみようか。