20, 09. 2010 二つの天蓋


暑い中を探し当てた2つの会場で,全く同等の驚きを体験することとなった。最初は県立美術館で,二度目は国立陶器博物館でのこと。カテドラルから北東への道を辿り,幅広い勾配がある坂道を上った。目の前が開け,遠方に緑の帯が広がった。堤防の様な感じだった。左右ほぼ同じ位の位置に橋が見えた。右手の橋が装飾があって面白そうなので,右手の橋を渡ることにした。

石材で造られた橋は、かなり旧いものと思われた。中央付近迄渡って,川の流れを見ようと下を覗き込んだが、水の流れは無い。中央に道がつけられ,左右は公園になっていた。橋と両側の岸の状況から,どう考えても公園の位置には川が流れて然るべきだった。橋はかなりの長さがある。かっては水量豊だった川の水嵩が減って,暗渠にでもして公園としてしまったのだろうか。街を取り囲む緑地帯は,トゥリア庭園と名付けられている。




川べりの道の南にも、レアル公園の緑が続いていた。随分奥が深い公園だった。公園の西外れに近い位置に,県立美術館があった。修道院だった建造物を美術館に改修したもの。部厚い壁に装飾が施された入口を入る。薄暗い空間の正面奥に明るいスペースがあって誘われる。ほぼ正方形のスペースに入って驚いた。外壁を見せているスペースの真上に,まるでプラネタリウムの様に,青く彩られた八角形の天蓋に星の様にちりばめられた硝子が光っていた。現代の構造物だった。回廊で囲まれた中庭や,パティオが数カ所あった。その1つの外壁は鮮やかな青で彩られていた。古代から近世に至る美術品が展示されていたが,中世の祭壇を飾る宗教画が迫力があった。






美術館を出て,レアル公園を見ながら先刻渡った橋へ戻る。格別に大きな樹があって、数多くの実を付け,樹の下にも実が落ちていた。女性の清掃員が,落ちた実を掃き集めていた。




街の中央部にある陶芸博物館は,中々見付からなかった。2度目に尋ねた薬剤店で、漸く場所が分かった。過剰なロココ調の装飾が施されたファサードだった。少々げんなりして入口を潜った。チケットを求めて,暗いホールを過ぎ,正面奥の明るい空間に向う。ファサードのねっとりした装飾からはかけ離れた鉄骨と硝子のすっきりした天蓋が現れた。外壁に落ちる影が美しい。古代から現代に至る陶磁器の他に,各時代の家具調度も展示され,見応えのある博物館だった。古代ギリシャで現れた,緑色の釉薬の色が鮮やかだった。陶芸家のお二人,工房のK・Kさんとギャラリー門馬のOさんにカタログをお土産に買求めた。





中央市場へ寄って駅へ向おうと市場を目指す途中で,入口の上部にドンキホーテとサンチョパンザではないかと思われる装飾を見付けた。大きな垂れ幕が下がり,展示場であることが判った。スペイン語は聞き取れないが,表記されると凡その意味は判るのが有難い。市場で朝に見かけたイチジクを買求め,駅へ向う。運良く座席は進行方向右手の座席だった。発車後間もなく現れた地中海の青は素晴しかった。水平線が深いブルーでくっきり見え,岸へ向けて青が様々な表情を見せる。浅瀬はエメラルドグリーンに輝いていた。最後の汽車の旅を,存分に楽しんだ。



昨日所用あって,札幌へ出かけた。朝の雨は、地下鉄の中島公園駅を出た頃には止んでいた。銀杏並木で銀杏を見付けた。昔の教え子の個展を観て,前日の北の沢のトリカブトを思い出し,植物園迄歩いた。少し盛りをすぎていたが、植物園の西の奥に咲くトリカブトを見ることが出来た。大きなヤマボウシが実を付けていた。旅の間に,昨年蒔いた芽が枯れていたので,落ちている実を拾った。久々の植物園を小一時間歩き廻り、昨年見付けられなかったトチノキも見付けた。名札を見るとヒメトチと書かれていた。子供の頃を思い出し,落ちている実を拾って戻った。








今日は朝から晴天。ヤマボウシを蒔くことにしようか。