24, 11. 2009 黒いバッグ


一昨日の好天が遠い日のことの様に、昨日は雨が度々降る陰鬱な天候だった。前日の青の輝きとはまるで異なる重い青にうんざりし、今日の晴天の予報に賭けて、手がけてあるバッグを仕上げることにした。間もなく根雪となって、歩行に神経をすり減らす日々がやって来る。スパイクタイヤが禁止となり、スタッドレスタイヤに替えられてから、冬の横断歩道は、スケートリンクさながらとなった。転倒すれば骨折は免れないので、滑らぬ底の靴を吟味して選び、踵に重心を置かぬ様に気を付けて歩く。最も安全そうな黒いブーツに合わせて、A3も入る程の大きなバッグを手がけていた。

日の入りが益々早くなって、灯りを点ける時間が長くなる。最も佳い時間の過ごし方は本を読むことなのだが、読む本がない折は、手仕事をして過ごす。先日、裁縫箱と化した食器棚を整理していて、すっかり忘れていた随分以前に買求めた革を見付けた。黒地にパールの入ったグレーで、ランダムに手描きの線が引かれた革。量が少し不足なので、僅かに残っていたグレーの革と組み合わせた。中袋は、昨年白とバチターブルーのバッグを作った残りの合皮を使用した。革を裁断し、接着綿を貼付け、革を接ぎ合せ、中袋の2種のポケットを点けるところ迄出来ていた。






9時前から仕事に取りかかった。薄暗いので、電気を点けての仕事になる。夕食前には出来上がるかと予想していたが、9時過ぎ迄かかった。足元のしっかりしたブーツに合わせるバッグが出来上がった。

今朝、何時もの様に朝食前に日記を作成しようと取りかかって間もなく、時ならぬ電話が鳴った。早朝や深夜の電話は、大抵悪い報せと相場は決まっている。案の定、親類の者が倒れて、救急車で病院へ運ばれた報せだった。朝食もそこそこに、病院へ向った。幸い、症状は軽く、言葉もしっかりしていて、安堵した。後数日、様子を見るとのことで、2時前に家に戻った。

病院という所は、何もすることがないのに、澱の様に疲労が溜る場所。慌ただしく動き廻るスタッフの邪魔にならぬ様にするのが精一杯。すっかり疲れて戻ると、アトリエには陽光が溢れていた。明日はまた、天候の崩れが報じられているので、日記を後回しにして、少し仕事を進めた。慌ただしい日だった。