22, 06. 2010 ジギタリス


最も日の長くなる夏至の昨日は、生憎の空模様だった。今回の個展をお引受けすることが決まった1年前、会期は何時が良いかと尋ねられ、制作時の太陽光に一喜一憂するのが常なので、迷わず夏至を含む会期をお願いした。夕刻迄日の入る会場をイメージしていたが、曇天で、午後からは一時雨が降る天候だった。

ジギタリスが次々と開き始めた。キツネノテブクロの別名を持つ2年草で、鐘状の花冠の先は2唇形となり、内部に斑点がある。以前読んだデービッド アッテンボローの『植物の私生活』で、ケントの森がハリケーンに見舞われ、地面を覆っていた鬱蒼とした樹々が倒れて陽光が届く様になった場に、それ迄地中で眠っていた種子が一斉に発芽し、一面のジギタリスが咲いている写真を目にした記憶がある。生育に充分な陽光が必要な種で、種皮が陽光の変化を感じ取っての発芽だったと書かれてあった。夏の野草らしい趣のある好ましい種。




数日前、ポツンと1輪開き始めたギンロバイが、一斉に開き始めた。花期は結構長く、暫くは楽しめる。スモークツリーの下で、エゾキスゲが開いていた。ゼンテイカが朝開花し、夕刻には閉じるのに対して、エゾキスゲは夕刻に開花し、翌日昼過ぎには閉じる種。花の黄色も赤味が少ない。




シコタンハコベがポツンと開いていた。この先長い花期を迎える。ナンブトラノオも咲き出した。アサギリソウが葉を広げ、大きな半円球を形成している。





前日、開廊前に他の画廊に寄る為に見合わせたバイカウツギを切り取り、焼き上げて頂いた水差しに入れた。春に極小の芽を出したセンブリが何時か花を付けたら、この水差しに入れたいと思っている。



天候には恵まれなかったが、佳い来廊者に恵まれた一日だった。正午前、来週から20年振りの個展を開かれるSさんが見えた。やはり20年振りの再会。言葉を慎重に選び、会場や作品の印象を語って下さる様子が嬉しかった。私自身も両親の介護があって長いブランクを経験しているので、Sさんの再スタートへの思いは良く察せられ、強い目の光に、来週からの個展が佳い個展となることが予測出来、そうなることを希った。佳い再会だった。3時過ぎ、若い頃から札幌や東京で何度も2人展を開いた作家のSさんが見えた。時間をかけてゆっくりご覧になり、制作過程に迄話が及び、久々に突っ込んだ話が出来た。テンポラリー スペースのN氏が隣の会場のANEXを設計されたA氏と見えて、話題が広がった。帰られるSさんを送りがてら、裏の庭を案内した。雨は上がって、緑の匂いが立ち籠めていた。最後は陶芸作家のI氏の来廊。陶土で創られる立体が力強い。かなり大きな作品を発表されているので、大きな窯をお使いなのかと尋ねたら、分割して焼かれて組合わせておいでとのこと。制作時のご苦労が偲ばれた。

閉廊して外へ出ると、ギャラリー前の木立の下には、アカバナツメクサが咲き揃っていた。オオイタドリの背丈が随分高くなっていた。僅かに夕映えが見受けられたが、明けた今朝は、青空が広がっている。



エゾキスゲ Hemerocallis lilioasphodelus var. yezoensis ユリ科
ジギタリス Digitalis purpurea ゴマノハグサ科
ナンブトラノオ Polygonum hayachinense タデ科