01, 08. 2010 プラド美術館


観光客の多いことを考えて、主目的のプラド美術館へは、開館30分前に着く様にホテルを出た。前日晴れて暑かったのに、曇り空で風が強く、肌寒かった。グラン ヴィア通りを東へ向うと、噴水のあるカスティーリョ広場の向こうに緑地帯が見え、プラド美術館があった。正面にはベラスケスの銅像。列柱の右手のチケット売り場と思しき所は、無人だった、丁度歩いて来た制服を身に着けた係員と思われる方に、チケット売り場を尋ねた。左手のゴヤ門へ行く様に云われた。行ってみると、数人の係員が行列を作る為のスペースを金属製のスタンドと布製のテープを組合わせて作っていた。入口を見上げて驚いた、特別展示がターナーとなっていた。ロンドンでの最終日、テートギャラリーへ行かなくて本当に良かった。主立った作品は、皆こちらに来ているものと思われた。



行列がどんどん長くなり、定時にチケット販売が始まった。入館は丁度正面入口の裏手に当たる場所だった。作品を見たいと思っていた作家の部屋だけを廻る。ベラスケスは圧巻だったが、余り大きくないグレコの作品が気に懸かった。グレコ特有の長くデフォルメされた昇天図なのだが、1枚の画面が4つのピースで出来上がっている。頭部や胸の部分迄が1枚の長方形に収められ、それに続く胴の部分が2枚のピースで出来上がっていた。奇異に感じたのは、ほぼ正方形に近い右手のピースを囲むL字型のピース。ローシェンナーとローアンバーを混ぜた様な一色で彩色されている。ピッタリ合っているので、意図的に不思議な木枠を作成し、組合わせたことが判る。この茶系のパーツをどの様な意図で組み込んだのか、現代の作品なら何ら不思議はないが、時代を考慮すると、大きな疑問が残った。写真を撮れる場所ではないので、売店で絵葉書がないかと探したが、見付からなかった。

次の目的地は、アトーチャ駅近くのソフィア王妃芸術センターなのだが、通り道でもあり、プラド美術館に隣接する王立植物園に立寄った。この先数多く目にすることになるサルスベリが咲き、オミナエシも咲いていた。花や蕾はどう見てもケシなのだが、葉が異なる植物があった。イチジクの実の様な木を見付けたが、実を付けた無花果を目にしたことがないので、自信は無い。高山植物が植え込まれた場所もあったが、もう花期が過ぎて朽ちていた。温室の近くに、松等の盆栽の大きな鉢が幾つも置かれていた。







プラド通りへ戻り、南へ向う。アトーチャ駅が見える所に、ソフィア王妃美術館があった。名称から、クラシックな建造物をイメージしていたが、コンクリートと錆の出た焦茶色の鉄材を組合わせた現代的な大きな建造物だった。チケット売場で、フラッシュを使用しなければ写真を撮っても良いと云われた。安直なカメラは使い始めてから5年以上になるが、植物や風景を撮るのがせいぜいで、フラッシュなしでの使用の経験が無い。係の女性に、フラッシュなしで撮れないので使用法を教えて欲しいと頼んだ。女性が使用法を教えて下さった。あっけない程簡単な操作だった。パリでもバルセロナでも、ピカソ館は人間の頭を観る感じだったが、此処は空いていた。流石にゲルニカの前だけは、人集りがあった。空間にゆとりのある佳い美術館だった。







主要目的を済ませ、後は気分に任せて北西へ戻った。朝は曇って肌寒かったが、午後に入って晴れ間が出て、気温が高くなった。中央部は白亜の建造物が多いが、周辺には煉瓦を素材とした建造物が数多く見受けられた。






前日通ったマヨール広場の近くで、市場を見付けた。原材料を売るよりも出来上がった食品の販売と、その場で食べる為のスタンドが設置されている市場だった。剥いたエビを食べている女性の一団があった。大分心が動いたが、暑い盛りなので自重した。市場の奥に様々な寿司を売る店舗があった。いなり寿司や巻寿司、握り鮨等が並べられていた。店の奥で、日本人の男性が寿司を握っていた。販売は陽気なスペイン男性。夕食は寿司にしようと物色していると、「ウナギ!ウナギ!」と大声を出した。指差す方を見ると、鰻の押し寿司があった。これに決めた。比較的少ないケースを指差すと、驚いたことに幾つ要るのかと尋ねられた。切り分けたピースを1個売りするらしい。希望の個数を述べると、プラスティックのケースに詰めて、ガリとワサビ、醤油のケースを入れ、割り箸を添えて、僅かな買物なのに大きな紙袋に入れてくれた。酢加減と鰻のたれの味が程良く、美味しい押し寿司だった。







翌朝トレドに発つ時間が早いので、支度を済ませて早めに休んだ。