07, 10. 2009 小樽へ - 時を経た建造物 -


急勾配の斜面を利用した植込みの散策で2時間近くを楽しく過ごし、赤岩園芸を後にして、級友のお宅へ向かう。茶道は高校時代迄で止めてしまったが、お二人はその後もずっとお続けで、小樽の級友はお母様が茶道をお教えの方で、札幌の御実家でお母様のお稽古を手伝っていらっしゃる。近くの高校の課外授業の茶道を受け持たれておいでなのだが、中々大変そうで、講義中の学生の在り様を思い出せば、難儀の程は容易に想像がつく。

迷路の様な街を通り抜け、急坂を上り、高台にあるお宅に着いた。手入れの行き届いた見事なお庭。母屋は建て替えられて、現代風の豪壮な建築になっているが、離れはそのまま残され、お茶室として利用されている。今年の夏は雨が多く、苔に水撒きは不要だったとメールに書かれていたが、広いお庭の苔の維持だけでも、大変な労力なのかが分かる。早起きの彼女は、朝仕事で庭の手入れをされておいでの様で、ブログのカウンターを見ると、雨の朝に、数日分の日記を纏めてご覧頂いているのが分かる。広い敷地の隅々まで手入れが行き届き、様々な植物が植え込まれていた。




玄関を入って左手の奥のお座敷に通される。床には、籠にススキと秋の花。彼女に許しを得て、写真を撮らせて頂く。このお座敷に直交する廊下の先が、離れになっている。母屋と離れの接合部分には、右手にお蔵の扉があり、左手の幅広い格子戸を開けると、僅かな奥行きを利用した水屋が設えてある。







離れの縁側の造りが素晴しい。幅広の厚板の縁の先は三和土になっていて、その外に硝子戸が廻っている。桟が多く、磨き難そうなガラス窓は綺麗に磨かれていて、彼女の働き者ぶりに驚嘆する。縁と三和土の上の天井の造りも素晴しい。





松茸のお吸い物、焼き物、菊の花の酢の物、香の物と途中で彼女が調達された生寿司の豪華なお昼食を戴く。以前伺った折は、朱塗りの猫足のお膳だったが、今回は木地に秋の植物が装飾された丸いお膳。天井の高さが心地良い。長押から1m程の高さ。床の間には秋明菊が入れられてあった。離れは、築後80年とのこと。時を経た建造物ならではの趣がある。お手入れは大変なことと思われるが、働き者の彼女のこと、きっと大事に維持されて行くに相違ない。





お濃茶とお薄を戴き、至福の時間を過ごす。お棗にも、秋の植物が装飾されていた。空はすっかり晴れ上がり、帰りがけに車窓から見た海は、青かった。不完全燃焼だった夏を払拭する様な、佳い一日だった。