25, 09. 2009 自然に還る道


思いがけずマンテマを見付け、浮き立った気分で道を北へ進んだ。東側の耕作地の奥には、高速道路を走る車が見える。西側の荒れ地の遥か彼方には、札幌の市街と背後に続く山並みが見える。通って来た道を振り返ると、団地はかなり上方に見える。過日札幌からの帰りに、駅でバスを待つ間に市のハザード・マップを見たら、石狩川の氾濫を想定すると、この一帯は5m以上水没する地域として、赤く彩色されていた。側溝付近には、ミゾソバが可愛らしい花を咲かせていた。






高速道路から続く五番通り迄来て、足が止まった。真直ぐ北へ進める筈の道がない。僅かに轍の跡が残っているが、道は背丈の高い野草で覆われていた。西側の角には、以前農家があった。高速道路から続く五番通りは舗装され、以前は車など滅多に通らぬ道であったが、車の往来が激しい。舗装道路を渡って、農家があった辺を少し西へ進む。屋根が朽ちてなくなったサイロの姿があった。周囲は、牧草としてでも刈り取られるのか、草の背丈は低かった。



先週土曜日に、油絵を描きに見えている方が、『人間が消えた世界』(アラン・ワイズマン著 鬼沢忍訳 早川書房)という本を貸して下さった。題名から予想されるSFの世界ではなく、ヒトという生き物が直接、間接に、如何に多くの動植物を過去に絶滅させ、核、石油化学製品という、例えヒトが死に絶えても億単位の年数で悪影響が残る世界各地の事例が書かれている。近い所では、韓国と北朝鮮の間の夫々2万人を超える兵士がにらみ合っている非武装地帯( DMZ )に、アジアの絶滅危惧種が集まっている事例も紹介されている。命の源の水の管理の為に数多く造られているダムや、エネルギー源として400箇所以上現存する原子力発電所等、火薬庫を抱えている様に、危険に満ちている。ヒトという最も危険な生き物が去ると、自然が還って来る事例を目の当たりにした思いだった。

下って来た1本道を帰る道すがら、マンテマの種を採った。少し未成熟の様にも思われたが、蒔いてみようと思っている。



マンテマ Silene gallica var.quinquevulnera ナデシコ
ミゾソバ Polygonum thunbergii タデ科