14, 07. 2009 大きな栗の木


昨日の雨は、終日降り続いた。気温も20度を下回り薄暗く、仕事をする気が起きなかったので、油絵を描きに見えている方がお持ち下さった、山崎豊子の『運命の人』の完結編を、日中なのに灯りをつけて読んだ。折しも核の持込みの密約の文書の隠蔽と廃棄が問題になっているが、沖縄返還の際に交わされた密約をスクープした有能な新聞記者が、為政者に因って弾圧、翻弄された実話を基にした小説だが、当時を知る人間にとっては、実在した政治家が分かり、何時の世も変わらぬ、国民を愚弄し弾圧する為政者達の姿が浮き彫りとなり、戦中、戦後を通じて犠牲を強いられている沖縄の姿が、声高でなく、しっかりと書き込まれている。全4巻からなる小説だが、見事な構成力で、高齢の筆者の知力と気力が感じられた。

束の間の晴れ間だった一昨日、絵具の乾きを待つ間に、近所の公園を廻る散歩に出かけた。その前日、今月のモデルに使用したテッセンが、花心の部分がテッセンのそれではなく、ヤマボウシに近い事が話題となり、中のお一人が、ヤマボウシに埋もれる様なお宅がある事を教えて下さったことと、買物帰りに公園でクリの花を見かけたので、300m位の間隔で、南北に走る小公園を2つ廻って来ようと考えた。

南にあるスーパーへの行き来に通る白樺の公園には幼稚園が隣接しているが、かっては走り回る子供達の声で賑やかだった公園に、子供の姿はなかった。中央に小高い芝生の山が造られ、周囲に砂場や遊具が点在する小公園に、2本のクリの木が植えられている。双方共にかなり大きくなって、長い花序を伸ばした花が満開だった。濃厚な香りを放つ花には、虫の姿も見られた。下写真の小山の右奥に、もう1本のクリの木が植えられている。




小公園を北に進み、ヤマボウシのあるお宅へ向かう途中で、もう盛りを幾分過ぎた白い花の大きな樹を見かけた。辺には同種の樹が数本植えられていた。樹皮はサクラに似ているが、植物名は分からない。帰宅後図鑑を調べたが、徒労に終った。





更に北へ進むと、人手が入らず、野草が伸び放題になっている家があった。団地の住人の高齢化が進み、この様なお宅が散見される。綺麗に手入れされていた庭が荒れ出し、野草が勢力を増す。やがて、突然更地にされて、新たな家が建てられたり、そのまま更地として放置されている場所が増えて来た。目にする度に、明日は我が身と考えている。



イヌザクラ Prunus buergeriana バラ科
クリ    Castanea crenata ブナ科