03, 09. 2010 路地の街トレド


トレドを旅程に組み込んだ折、旅行社の係の方に、マドリッドからの日帰りのツアーを薦められた。エル・グレコ縁の地トレドは、自分の足で歩いて街の雰囲気を味わいたかったので、日帰りのツアーは断って1泊することに決めた。

雲一つない晴天だった。タホ川でぐるりと取り巻かれ、南に突き出た半島の様な部分が、トレドの旧市街になっている天然の要塞の様な地形。北の言わば付け根に当たる部分にホテルが位置していたので、時計回りに廻り、中央のカテドラルに向う道筋を考えた。東の高い位置にあるサンタ・クルス美術館やアルカーサルが見え、そちらを目指して坂道を上り始めた。城門を幾つか潜り、見晴らしの良い地点に出た。中央にはホテルの北に見えていたドーケ・デ・レルマ博物館が見えた。更に東には街を取り巻くタホ川が青く光っていた。上からは、現在も残る城壁や門が見渡せた。







急坂を登り、サンタ・クルス美術館とアルカーサルを廻って、南西に向けて降り始めた。網の目の様に、細い路地が入り組んでいた。観光の街だけに、インフォメーションでもホテルでも、同一の地図を渡してくれる。観光客は皆、臙脂色で縁取られた地図を手に持って歩いている。







観光客の一団が出て来た教会へ入ってみた。小振りながら、端正な空間を持った教会だった。ファサードが路地の奥に押し込められた様な教会があった。門扉が閉まっていて、中には入れなかった。





路地の表情が佳い。大学の1期先輩だった、先年亡くなられた作家のY氏が、スペインは路地に風が通ると仰っておいでだったのを、思い出した。路地の奥が開けて、広場があるのが伺えた。6世紀に建立され、イスラム時代はメスキートとなり、13世紀から15世紀にかけて教会に改修されたカテドラルが聳えていた。







グレコゴヤ、ベラスケスの絵画が収められた、壮麗な空間だった。