16, 10. 2009 秋のサフランに再会した


午後から晴れとの予報が出ていた昨日、当地は朝から晴れ上がっていたが列車が札幌に近付くにつれて雲が多くなり、工房へ向う琴似の駅で降りた頃には、少し雨が落ちて来た。三角山と呼ばれる名称通りの姿の山を目指して歩く。K・Kさんの工房は、三角山の麓にある。バスも通っているのだが本数が少なく、列車と接続して乗れた試しはない。道は一本道。途中の商店街が面白いので、歩くのはあまり苦にならない。札幌でも古く開けたこの地は、住んでいる団地とは異なり、様々な業種の店舗が建ち並んでいる。工房にも素敵な薪ストーヴが置かれてあるが、薪ストーヴの専門店もある。大きなガラス窓の店で、中が良く見えるので、素敵なデザインの薪ストーヴを毎回眺めて通る。骨董店も2軒あって面白い。生花店も数多く、何か佳い花はないかと、目で素早く物色して通り過ぎる。商店が切れた先は高級住宅地で、庭の造りを眺めながら通るので退屈はしない。この辺りから道はかなりの勾配となるのが、少々難点。山に沿って通る車道を右に曲がり、急勾配の坂を上った所に工房がある。

前回素焼をお願いしてあった角皿と、陶筥の素焼が出来上がっていた。夫々にペーパーをかけて、不要な突起を落とし、上薬をかける下準備の撥水剤を底や蓋が接する部分に塗って、上薬が付かぬ様にする。作業中に少し陽が射して来た。裏のお庭は殆ど花期が終っていたが、樹々は紅葉を始めていた。春に成形したポットの素焼をお願いして、長い下り坂の道を、友人が待つ公園へ急いだ。




地下鉄の駅に近い公園に、友人の姿を見付けた。春に一緒に原始林を散策した作家のT さん。綺麗に色付いた楓の落葉や、プロペラの様な形の種を、拾っておいでだった。地下鉄で大通公園の西の端の駅で降りる。空は晴れ上がり、午前中より暖かかった。閉園時間が心配なので、北へ進路を変え、植物園を目指す。秋の植物園は、本当に久々のこと。夕刻に近く、余り人影もなく、ゆっくり散策出来た。子供の頃、両親に連れられて植物園で、トチの実を拾い集めたことを思い出した。父が持ち帰ったトチの実を、色鉛筆で写生してくれたことも思い出した。堅実な写実画で、トチの実の光沢や質感が描き表されていたのを覚えている。1997年に、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァで個展をした折、1ヶ月余を滞在したホテルの傍に公園があって、朝に白鳥が羽根を広げていたが、その公園でトチの実を拾い、父に土産と一緒に手渡したことも思い出された。遠い記憶を手繰り寄せてトチの木を探したが見当たらなかった。落ちている松毬を拾い、T さんはまた綺麗に色付いた葉を集めていらした。ラワンブキの姿もあった。写真左下の小型の丸い葉が普通のフキの葉なので、その大きさが推し量れよう。紅葉が始まった園内には、ヤマブドウがいち早く色付いて、アクセントを付けていた。





東側にある園の入口から反時計回りに園の外周を廻り、西南の角に近い地点で、咲き残りのエゾトリカブトを見付けた。付近一帯には、もう花が落ちた株が、沢山見受けられた。花期に訪れたなら、見事な紫色の一角を形成していたと思われた。




その少し南に、一面に広がる紫色のサフランがあった。2006年、ロンドン郊外のキューガーデンで見たのと同じ種のサフラン。葉はなく、花のみのautumn crocus。日本のイヌサフランは、園芸種として改良されているのか花が大きいが、この種は春に咲くアヤメ科のサフランとほぼ同等の大きさで、色も佳い。夕刻迫るキューガーデンの情景が、懐かしく思い出された。




閉園を告げるアナウンスに急き立てられて、園を出た。歩道に張り出した楓の1種と思われる樹が赤く色付いていた。以前温室に入った折に見かけた柿の木の下には、小さな柿の実が転がっていた。


イヌサフラン  Colchicum autumnale ユリ科  
エゾトリカブト Aconitum sachalinense ssp. yezoense キンポウゲ科